jpeg-6b.tar.gzに含まれるjchuff.cの関数encode_one_block()は、DCT変換と量子化を終えたブロックを引数にとり、DC/AC成分の係数をハフマン符号にエンコードして出力する。このうち、63個のAC成分の係数をハフマン符号化する部分では、1つの係数につき、先行して0が続く個数(0ランレングス)の符号、係数のビット長の符号、係数そのものを連続してビットストリームに出力する。0ランレングスの符号と係数のビット長の符号については、事前に用意したテーブルから求めてemit_bits()でまとめて出力し、続けて係数そのものを再度emit_bits()で出力する。したがって、0ランレングスが16以上になる特別な場合を除き、ループ1回につきemit_bits()を2回呼び出すことになる。

LOCAL(boolean)
encode_one_block (working_state * state, JCOEFPTR block, int last_dc_val,
                  c_derived_tbl *dctbl, c_derived_tbl *actbl)
{
  ...
  r = 0;                        /* r = run length of zeros */

  for (k = 1; k < DCTSIZE2; k++) {
    if ((temp = block[jpeg_natural_order[k]]) == 0) {
      r++;
    } else {
      /* if run length > 15, must emit special run-length-16 codes (0xF0) */
      while (r > 15) {
        if (! emit_bits(state, actbl->ehufco[0xF0], actbl->ehufsi[0xF0]))
          return FALSE;
        r -= 16;
      }

      temp2 = temp;
      if (temp < 0) {
        temp = -temp;           /* temp is abs value of input */
        /* This code assumes we are on a two's complement machine */
        temp2--;
      }

      /* Find the number of bits needed for the magnitude of the coefficient */
      nbits = 1;                /* there must be at least one 1 bit */
      while ((temp >>= 1))
        nbits++;
      /* Check for out-of-range coefficient values */
      if (nbits > MAX_COEF_BITS)
        ERREXIT(state->cinfo, JERR_BAD_DCT_COEF);

      /* Emit Huffman symbol for run length / number of bits */
      i = (r << 4) + nbits;
      if (! emit_bits(state, actbl->ehufco[i], actbl->ehufsi[i]))
        return FALSE;

      /* Emit that number of bits of the value, if positive, */
      /* or the complement of its magnitude, if negative. */
      if (! emit_bits(state, (unsigned int) temp2, nbits))
        return FALSE;

      r = 0;
    }
  }
  ...

jpeg-6b.tar.gzに含まれるjchuff.cの関数encode_one_block()は、DCT変換と量子化を終えたブロックを引数にとり、DC/AC成分の係数をハフマン符号にエンコードして出力する。このうち、63個のAC成分の係数をハフマン符号化する部分では、1つの係数につき、先行して0が続く個数(0ランレングス)の符号、係数のビット長の符号、係数そのものを連続してビットストリームに出力する。0ランレングスの符号と係数のビット長の符号については、事前に用意したテーブルから求めてemit_bits()でまとめて出力し、続けて係数そのものを再度emit_bits()で出力する。したがって、0ランレングスが16以上になる特別な場合を除き、ループ1回につきemit_bits()を2回呼び出すことになる。

0ランレングスの符号、係数のビット長の符号、係数そのものを、1度に取得できるように別のテーブルを事前に作成しておけば、emit_bits()を呼ぶ回数を1回減らすことができて、性能を改善できるはずである。問題はテーブルのサイズと、1度に取得するビット数であるが、これはデータ精度によって変わってくる。

libjpegは、jmorecfg.hのマクロBITS_IN_JSAMPLEでデータ精度に8ビット、または12ビットをコンパイル時に指定できる。デフォルトは8ビットであり、YUVの各成分は0から255の値をとるが、ソースコードそのものは各成分が12ビット(0から4095)でも動作するようになっている。

データ精度が8ビットの場合は、DCT変換と量子化を終えたブロックの係数の絶対値は最大10ビット(マクロMAX_COEF_BITSで定義される)になる。ただし、普通の量子化テーブルなら、量子化のときに1で割ることはほとんどないので、係数の絶対値が10ビットになることは滅多にない。係数が8ビットに収まる場合(−128から127)は、テーブルから出力する符合を取り出すことにして、それ以外の場合は従来通りに計算することにする。データ精度が12ビットの場合は、ブロックの係数の絶対値は最大14ビットになるが、同様に係数が8ビットに収まる場合だけテーブルを使用すれば、実装を共通化できる。

0ランレングスのパターン(0から15)とブロックの係数(−128から127)から、出力すべき符号とその符号長を取り出せるテーブルを用意することにする。計算してみると、係数を1つ出力するとき、符号の最大長は24ビットになるので、32ビット整数の上位24ビットに符号、下位8ビットに符号長を格納することにすると、せいぜい16kバイトのテーブルを新たに用意すればよいことがわかる。

もし、係数の絶対値が10ビットに収まるすべての場合について、テーブルに符合を格納することになると、テーブルのサイズが8倍になる。それだけではなく、テーブルに格納する符合の最大長は26ビットになり、ビットストリームへ出力する関数emit_bits()も修正が必要になる。

パッチをあてた場合は、2560×1440の画像をcjpegでエンコードしたとき、10%程度高速化できた。